小話
短いお話をつぶやいてみる。夢系の話が主になると思いますが、名前変換機能はないです。
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落乱・潮江妹01
潮江文治郎の妹・ヒロイン
・文治郎の二つ下、つまり四年と一緒
・文治郎とは全く似てない
・どっちかと言うと仙蔵に似てる
・妹が一年になろうとしている頃の話
***
『拝啓 兄上
春なお遠く、厳しい寒さが身に堪えます。
家のものはみな健康に過ごしておりますが、町では風邪が流行っているようです。
風邪など引かれていませんでしょうか。
便りがないのは元気な証拠といいますが、たまには文を出してくださいね。
母上が心配しておられます。
さて、今回筆を取りましたのは私事ですが、兄上にお知らせしたいことがあったからです。
来たる春、私も数えで十になりましたので、学園に入学することが決まりました。
春休みに帰省されるときに、色々とお話いただけたら嬉しいです。
取り急ぎ用件のみですが、兄上の健康を祈っています。
かしこ』
つらつらと、きれいな字で綴られた手紙を読み終え、伊作は文治郎に顔を向けた。
文治郎が顔をしかめた理由が少し分かった気がした。
文治郎の様子に苦笑しながら、伊作は文を文治郎の枕元に置いた。
「・・・しっかりした妹さんなんだね」
「・・・ああ」
そう言った文治郎の顔はどことなく赤らんでいる。
それは少々の照れも混じってはいるものの、彼らが居るこの場所は保健室であり、時折咳き込む様子や、いつもよりもかすれてしまっている声を聞けば、誰にでも分かる。
原因は風邪である。
丁寧な口調で、兄の健康を気遣ってくれている礼儀正しい妹からの文。
他意はないとは言え、この寒い中、鍛錬と称し寒中水泳に励み、その結果風邪を引いてしまった鍛錬馬鹿には耳の痛い言葉だ。
今筆を取ったとしても、正直に風邪を引いたしまったことなんてかけるはずもない。
黙ってしまった文治郎に、本当は色々と注意をしようと思っていた伊作だったが、自分が言うよりもだいぶ堪えたらしい様子に、悪いとは思ったけど顔が緩んでしまった。
文治郎も、所詮は人の子なのだと。
そもそも風邪で寝込んでいるとはいえ、あの文治郎が自分に手紙を読ませるなんて驚きである。風邪はこうも人をおかしくさせるものだっただろうか。
「早く直さないとね、風邪」
「・・・そうだな」
それにしても。
文治郎の妹ってどんな子なんだろう。
まったく想像できないが、手紙の様子だと、礼儀正しい子なのだろうと思う。
字もきれいだし。
それにまだ十歳なのに、ずいぶん難しい言葉を知っている。
そう、自分と歳が離れているわけでもないのに。
この手紙を読めたのは文治郎の気まぐれだったけど、いつもより、次の春が来ることを楽しみに感じた。
くすくす笑う僕を、文治郎は睨んでくるけど、顔が赤いからぜんぜん怖くない。
たぶん、妹に諌められていることを笑っているのかと、勘違いしてるんじゃないかな。
まぁ、だからといって本当のことを言うつもりはないけど。
どんな子なのかな。
顔が、文治郎と激似だったらどうしよう。
それはそれで、いいんだけど。
ああ、本当に春が待ち遠しい。
(早く君に会いたい)
***
ながらく携帯に眠っていた落乱夢。
まさに置場に困った。
・文治郎の二つ下、つまり四年と一緒
・文治郎とは全く似てない
・どっちかと言うと仙蔵に似てる
・妹が一年になろうとしている頃の話
***
『拝啓 兄上
春なお遠く、厳しい寒さが身に堪えます。
家のものはみな健康に過ごしておりますが、町では風邪が流行っているようです。
風邪など引かれていませんでしょうか。
便りがないのは元気な証拠といいますが、たまには文を出してくださいね。
母上が心配しておられます。
さて、今回筆を取りましたのは私事ですが、兄上にお知らせしたいことがあったからです。
来たる春、私も数えで十になりましたので、学園に入学することが決まりました。
春休みに帰省されるときに、色々とお話いただけたら嬉しいです。
取り急ぎ用件のみですが、兄上の健康を祈っています。
かしこ』
つらつらと、きれいな字で綴られた手紙を読み終え、伊作は文治郎に顔を向けた。
文治郎が顔をしかめた理由が少し分かった気がした。
文治郎の様子に苦笑しながら、伊作は文を文治郎の枕元に置いた。
「・・・しっかりした妹さんなんだね」
「・・・ああ」
そう言った文治郎の顔はどことなく赤らんでいる。
それは少々の照れも混じってはいるものの、彼らが居るこの場所は保健室であり、時折咳き込む様子や、いつもよりもかすれてしまっている声を聞けば、誰にでも分かる。
原因は風邪である。
丁寧な口調で、兄の健康を気遣ってくれている礼儀正しい妹からの文。
他意はないとは言え、この寒い中、鍛錬と称し寒中水泳に励み、その結果風邪を引いてしまった鍛錬馬鹿には耳の痛い言葉だ。
今筆を取ったとしても、正直に風邪を引いたしまったことなんてかけるはずもない。
黙ってしまった文治郎に、本当は色々と注意をしようと思っていた伊作だったが、自分が言うよりもだいぶ堪えたらしい様子に、悪いとは思ったけど顔が緩んでしまった。
文治郎も、所詮は人の子なのだと。
そもそも風邪で寝込んでいるとはいえ、あの文治郎が自分に手紙を読ませるなんて驚きである。風邪はこうも人をおかしくさせるものだっただろうか。
「早く直さないとね、風邪」
「・・・そうだな」
それにしても。
文治郎の妹ってどんな子なんだろう。
まったく想像できないが、手紙の様子だと、礼儀正しい子なのだろうと思う。
字もきれいだし。
それにまだ十歳なのに、ずいぶん難しい言葉を知っている。
そう、自分と歳が離れているわけでもないのに。
この手紙を読めたのは文治郎の気まぐれだったけど、いつもより、次の春が来ることを楽しみに感じた。
くすくす笑う僕を、文治郎は睨んでくるけど、顔が赤いからぜんぜん怖くない。
たぶん、妹に諌められていることを笑っているのかと、勘違いしてるんじゃないかな。
まぁ、だからといって本当のことを言うつもりはないけど。
どんな子なのかな。
顔が、文治郎と激似だったらどうしよう。
それはそれで、いいんだけど。
ああ、本当に春が待ち遠しい。
(早く君に会いたい)
***
ながらく携帯に眠っていた落乱夢。
まさに置場に困った。
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