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小話

短いお話をつぶやいてみる。夢系の話が主になると思いますが、名前変換機能はないです。

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鬼道さんと私とバレンタイン

鬼道さんと田口

***

「鬼道さん!私、今日特大です!」

「…と、特大?」

「はい!受け取ってください!」

そういって押し付けられるように渡されたのはリボンの掛かった小さい箱。
かわいらしいピンクのラッピングを見て、ようやく今日がなんの日か思い出した。
何だか胸が温かいような、照れ臭いような気がして、思わず顔が緩んでしまった。
ゴーグルのおかげで、緩んだ目元を見られなかったのは幸だな、と思った。
これから、ますますゴーグルが手放せない季節になりそうだ。

「…ありがとう、田口」

「いいえー、喜んでいただけました?」

「…ああ」

「なら良かったです!」

嬉しそうに笑う田口は、いつにも増して楽しそうだ。
バレンタインとは、日本では企業商戦の意味合いが強いが、まあ、たまにはそれにのせられるのも悪くない。
それにしても、何が特大なのだろうか。
両手に収まる箱はお世辞にも大きいとは言えない。
むしろ、この間見かけた、市販で売られている物より小さい気がする。
…いや、大きさなんて、どうでもいいのだ。
こういう物は、あくまで気持ちだから。
そう、気持ちだから。
…だからと言って、気にならないと言えば、それは嘘になるわけで。

「…田口、今日は、何が特大なんだ?」

「ええっ、それを聞いちゃいます?」

「聞いてはいけないのか?」

「…別にいいですよ、今日特大なのは、」

鬼道さんへの愛情です!

そう爽やかに言い放った田口に、一瞬脳が着いていかなかった。
何でこんな恥ずかしいことをこいつは惜し気もなく口に出せるんだ!
遅れて赤くなった顔全体を、ゴーグルだけで隠すのはもう無理な話だった。

(だけど、だからこそ、俺は田口が)

苦し紛れに、寒さを理由に、首に巻いていたマフラーでなるべく顔を隠そうとした。
しかし伸びてきた田口の手は、俺の袖の端を緩く捕まえてしまったので、断念した。
腕はもう一本付いているというのに、すっかり失念していた。

(今年も、田口には全く敵わないな)

観念して握った手は、いつも通り自分より小さく、温かなものだった。


***


最近甘くない話が続いていたので、甘ったるくしてみました。
でも何て言うか、たぶんちょっと未来かアナザーの話ですね。
鬼道さんが、自覚してるもの…!←
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